「ちょうどいい」はどこにあるのか

みなさんおはこんばんにちは、木楽舎代表の安東です。

 

モデルハウス「青RINGO木上」に植わるイロハモミジの冬芽が伸びてきました。

 

まだまだ寒いですが、二十四節気では「立春」、七十二候では「魚上氷(うおこおりをいずる)」ですから、すでに春の訪れの準備段階なのですね。

 

さて、最近ではご相談いただく方から↓のような質問を受けることが増えました。

「木楽舎さんのUA値はいくつですか?」

 

UA値(ユーエー値)とは、建物の断熱性能を表す指標の一つです。

単位は「W/㎡・K」。(ワット パー ヘイベイ ケルビン)

W=ワット

K=ケルビン(温度差の指標:℃と読み替えてよい)

つまり、室内と室外の温度差が1℃(1K)の時、建物の表面積1㎡からどのくらいの熱量(W)が出入りするか、を表す数字です。

UA値が小さくなるほど、魔法瓶の状態に近づいていきます。

 

国が定める省エネ基準の項目に含まれていることと、建物の規模や形状による誤差が出ないということから、断熱性能を検討するためのメイン指標になっています。

最近では温熱に詳しい先生方がYoutubeなどで情報発信を盛んに行っている(私も愛聴者の一人w)ので、お客さんにもかなり詳しい人が多くなった印象です。

 

ただ気を付けてほしいのは、断熱性の良さと暮らしやすさは直接的な比例関係にはないということです。

温熱環境を検討するためには、少なくとも↓のような数値も併せてトータルで検討していく必要があります。

・η値(イータ値):日射熱取得率(暖房期と冷房期それぞれを計算)

・開口部U値:窓などの熱還流率(熱の通しやすさ)

・Q値:熱損失係数。床面積当たりの熱損失の総量を示します。

・μ値(ミュー値):伝説のポケモ・・・夏期に建物が取り込む日射熱量

 

↑の数値を計算する下ごしらえとして、庇(ひさし)の係数や方位の確認、そしてそもそもの日当たりはどのような状況かというリアルな要素の検討も必要です。

 

そして、ゴール地点の設定がとても大切。

木楽舎がパッシブデザインを学ぶPassive-Design Technical  Forumでは、

「午前0時の室温20℃をベースとして、無断房のまま午前6時の室温が15℃以上」

という内容を冬の指標の一つとしています。

 

実際にモデルハウス「青RINGO木上」のある日の温度を見てみましょう↓

 

この日は1月中の最低気温を観測した日でした。

前夜は10:00には薪ストーブへの薪の追加を止めていたので、12:00には20℃+αの室温になっていたのではないかと思います。

(すみません、寝てました・・・)

 

朝起きて布団を出るときには15℃を少し上回っていて、体感として寒さは感じません。

水回りやその他の部屋も1℃以内の誤差でほぼ同じ室温なので、建物中を裸足でウロウロできます。

しばらくすると体の保温が冷めてくるので、その前に暖房を入れるというサイクル。

 

続いて、一日働いて帰って来た時の気温↓

 

たまたま夫婦ともに働きすぎた日だったので(笑)、外は縮み上がる寒さ・・・

それでも建物に入るとホワンと温かくてニヤリ。

日中の太陽熱の取り込みと保温だけでこれだけのことは成せるのです。

 

そんな木楽舎の建物の実質的なUA値は、0.51~0.57W/㎡Kの間を行ったり来たりする感じ。

住宅の高断熱化を追求する民間規格「HEAT20」で言えば、G1グレードをクリアするくらいなので、「超」が付くほどの高性能ではありません。

それでも、自然環境との付き合い方を建築の在り方で設えることで、電気に頼らずとも心地よく過ごせる時間は大幅に伸びます。

 

「このくらいでちょうどいいよね」というバランスを探す手間を惜しまない、これが大切です。